インサイドマン(2006)
『私はダルトン・ラッセル。二度と繰り返さないからよく聞け
私は銀行を襲う完全犯罪を計画し、そして実行する…』
マンハッタン信託銀行が三人の覆面をした犯人グループに襲われた
三人はスティーブン、スティーブンO,スティーブン・ビーと
と呼び合い駆けつけた警官を脅し立て篭もった。
急報を受け駆けつけたのはNY市警のフレイザーとミッチェル。
フレイザーは以前関わった麻薬事件で14万ドルの小切手紛失という
事件に巻き込まれ汚職の疑いにかけられ、名誉挽回もあり引き受ける。
信託銀行の会長のアーサーは狼狽し警察に事態を確認するより先に
有能な弁護士マデリーンを呼び出す。
銀行内では犯人グループのリーダー、ダルトンが人質全員に
自分たちと同じ格好をさせていた。これではダレが犯人かわからない。
一方表では、指令車に乗り込んでいる警部のダリウスの元に
フレイザーが駆けつける。一人一人、人質を解放するたびに
犯人像が明らかになっていく。四人の犯人像、やたら『時間稼ぎ』に
費やす真意とは…。その頃、アーサーはマデリーンに
『事件の打開という面目で犯人と交渉して銀行の貸金庫からあるものを
みつけて渡して欲しい』と依頼される。
それはアーサーの身の破滅にもつながりかねないものでもあった。
アーサーの狙いは何なのか、犯人の真の狙いは… (原題名:Insideman)
監督:
スパイク・リー
脚本
ラッセル・ジェウィルス
出演:
キース・フレイザー
(デンゼル・ワシントン)
クライブ・オーウェン
(ダルトン・ラッセル)
ジョディ・フォスター
(マデリーン・ホワイト)
クリストファー・プラマー
(アーサー・ケイス)
ウィリアム・デフォー
(ジョン・ダリウス)
キウェテル・イジョフォー
(ビル・ミッチェル)
カルロス・アンダース・ゴメス
(スティーブ)
キム・ディレクター
(スティービー)
ジェームス・ランソン
(スティーブO)
ピーター・ジェレティ
(コフリン)
 
REVIEW(****)

今回は脚本こそ書いていないものの、アドリブなのかどうなのか
チョロチョロと出てくる『民族のうねり』を感じさせるセリフ。
デンゼル演じる刑事と話をしていたイタリア系の警官が、
黒人の犯罪者のことを思わずNのつくアレを言いそうになり
言い直すシーン(デンゼルのように、アフリカ系は少ないという
偏見が親世代であるわけですね)
ターバンを巻いたシーク教徒の男性が解放されて出てくると
彼は盗聴器のしかけてあるコメントボードを持っているのに
皆は彼がアラブ人だと大騒ぎする。
NYがあのテロのトラウマから立ち直れないこともあらわして
いるし、取調べ時に彼が公共の場で常に警官などからチェックの
対象にされると不平を言うと、デンゼル演じる刑事が、「タクシーはつかまえられるだろ」
とジョークを飛ばすのには、キャブの運ちゃんに、こちらからの移民が多いのと
強盗されることを恐れ、黒人男性を乗車拒否することがある皮肉も含んでいるという
ピザ宅のハコについていたラジオに流れている演説が、独裁政治を
行っていたアルバニア指導者ホッジャのものだったというのも
ソビエト連邦の崩壊と同時につぶれていった社会主義を
織り交ぜている中、一部の金持ちは自分の資産を守るのに躍起に
なっていた…という事実も映画の中に対比的に織り込んでいるのが
いかにも社会派監督らしかった。
『セルピコ』や『狼たちの午後』などA.パチーノの強盗モノの引用は
彼の映画だけでなくお決まりで多いですが…
ギャングスタがそんなにキライなのか、今回のターゲットは50セント
名指しで出てくるシーンまであって『大丈夫なのか』とヒヤヒヤ。
強盗の狙いも、信託銀行の頭取の狙いも同じ貸金庫の中身
だけど『モノ』は違う。
頭取が保持したかったのは自らの地位で、強盗は『自分の生きていける金』
そして、強盗が完全犯罪を企てた上にスマートだったのが
『頭取をいかに追い詰めるか』というヒントをフレイザーに
与えて自らの手は汚さずに去っていったことかもしれない。
最初にC.オーウェンが『ここは狭いが監獄でない』
という出だしで『どこなんだろう』というアレとてっきり強盗『前』
のコメントかと思ったら『違った』のでヤラれたな、という。
『インサイドマン』という題名どおり、内通者が一人二人でも
いればもっと面白かったかも。



アンノウン(2006)
荒野の真ん中に立つ廃工場、そこに気を失った負傷した五人の男。
一番最初に目覚めたのは破れたデニムジャケットの男だった。
他の4人が倒れている間にかかってきた謎の電話。
『お前はワズか、ブロックマンか?周囲は警官だらけだ、あと数時間で戻る』
全く記憶のないデニムの男は、電話に適当に合わせながらも、倒れている4人
もしくは自分が『犯罪者』であることを知る。
次に縛られた男,三番目に青い作業着の男、次は手錠に繋がれ
被弾した男が目覚めた、最後に鼻の折れたが目覚めた、皆共通することは
『記憶がない』こと。
床に転がっている異臭を放つ催眠ガスボンベ、血のついたスコップ、壊れた携帯
背中合わせの二脚の椅子、廃工場にもかかわらず、ハイテク錠のかけられた扉。
どうやらここに居る二人は人質で三人は犯人、そして人質が逃亡を試みた時に
何かの弾みでボンベが開き皆が記憶を失った・・・
それが正しいことがやがて証明される。鼻を折った男が見つけた新聞記事と、
リバティ・プラザ・ウェストの制服を着た警備員の死体・・・そこから、そのビルで起きた
誘拐事件と誘拐された富豪コールと財務担当のマッケインであることが判明
しかし、相変わらず五人の記憶はフラッシュバック程度しか戻らない。
ただ彼らの頭にあるのは『生き残る』ことのみ。そんな中、誘拐犯のボスから
日没までにはつくという連絡が入る。はたして、五人のうち誘拐犯は誰なのか、
そして誰の記憶が一番最初に戻るのか・・・
(原題名:Unknown)
監督:
サイモン・ブラント
脚本:
マシュー・ウェイニー
出演:
ジム・カウィーゼル
(デニムジャケットの男)
グレック・キニア
(鼻が折れた男)
ジョー・パントリアーノ
(縛られた男)
バリー・ペッパー
(作業着の男)
ジェレミー・シスト
(手錠の男)
ピータ・ストーメア
(蛇皮ブーツの男)
ブリジット・モイナハン
(エリザ・コールズ)
グレイン・クロフォード
(アンダーソン刑事)
 
REVIEW(*****)
久々のジムカウィ、しかも『ハイクライムズ』の汚名払拭の悪役なので
期待してましたが、最後のドンデン返しでコケかけたかな(爆)
そういう『目的』で『脱いだら』いかんだろう(滂沱)ジムカウィ。
それでも星五つなのは、なかなか最後までわからなかったなと。
個人的にはパントリアーノに、もうちょっと活躍してほしかったけれど、あまり
彼が活躍すると『メメント』と同じ筋書きになるので、そのあたりは避けた
のでしょうね。誰が『仕掛けた』というか『原因』というあたりでは『メメント』と
根本的には一緒で、単に、今回のバヤイは『周りも一緒に記憶が消えてる』
もっとややこしいシチュエーションです。
映画の後にどうなるんだろうとか、そういうバカなコトは考えないほうがいいという。
ただ、人間、記憶を失うと、本能が出るという面白さを『密室劇』で引き出した
あたり、劇にしても面白いかもしれないっす。
映像もデジタルカメラが主流になる中35ミリシネスコを使ってるところも
黒の配色が『墨っぽくなって』、青が藍色に渋く引き立つのがいがったす。
何より、またもやジムカウィの『天使の目』に今回も騙されそうになったので
困るのだ・・・最後の最後で『怒りの目』が出てくるのだけど、アレが『本心』
の一部だろうなと。ヒューたまがやってくれなかったクセもの役に
挑戦してくれるジムカウィに'06年度末は完敗でした。


あるいは裏切りという名の犬(2006)
シテ島オルフェーヴル河岸36番地のパリ警視庁に、二人の警視がいた。
一人はBRI [探索出動班] 所属、正義感が強く、部下からの人望厚い
レオ、もう一人はBRB [強盗鎮圧班] 所属、権力志向の強いドニ
かつて親友だった二人は、同じ女性カミーユを愛し、彼女はレオの妻に。
以来二人は宿敵となり、お互いの部署も対立していた。
そんな折、ロベール長官の昇進が決まり、次期長官候補として
二人の名が挙げられる。それはパリで現金輸送車強奪事件が多発する
最中のことだった。事件の直接担当はドニ。
一年半で7件、9人が殺され200万ユーロが奪われたが事件は
解決にむけて何も進展していない。
彼としてはどうしてもこの事件を手柄に昇進したい。
レオはただ単にこの事件に『かかわり』淡々と仕事をこなす。
が、長官が指揮官に任命したのはレオだった。
不服なドニは計画への参加を長官に直訴。長官は
レオの指令の下に動くことを条件に許可をする。
レオにかつての情報屋シリアンから連絡が入る。
投獄中の彼は2週間後の出所を前に特別外泊をしていた。
シリアンは強盗犯の情報を売るかわりに、自分を刑務所に送った男
マルキュス・ゼルビブを殺害するアリバイに利用する。
強奪犯を逮捕するか、自分が逮捕されるか……。どうしても連続強奪犯を
逮捕したいレオは、共犯という危険を覚悟でシリアンからの情報を選ぶ。
主犯格はフランシス・オルンとロベール・“ボブ”・ブーランジェ。
シリアンから得た情報を基に犯人を洗い、綿密な計画を立てるレオ。
しかし、事件以外のことで頭が一杯になっていると相棒・エディに見抜かれる。
 レオの指揮下、アジトを取り囲み、慎重に現行犯逮捕の機会を伺う警察。
しかし突然、手に銃を持ったドニが単独でアジトへと向かい、ドニの部下エヴは
人質にとられ、エディは頭を打たれ即死――。
 エディの死を哀しみ嘆くパリ警視庁。悲惨な結果を引き起こしたドニへの糾弾が
強まる中、エディの葬儀は厳粛に行われた。
失態の責任を問われ、調査委員会にかけられるドニ。
責められて当然の状況ながら、どうあってもレオを引きずりおろしたい
ドニはレオがシリアンのゼルビブ殺害現場にいたアリバイを崩す。
運悪く、裁判を担当したのは警官を嫌うルソー判事、終身刑は免れなかった。
面会すら許されない妻カミーユの元へシリアンから密会の電話が入る。
それはレオの無実を記した手紙が入った袋だった。
しかし、そこにもドニの魔の手がまちうけていたことをしり…
(原題名:36 Quai es Orfevres)
監督・脚本:
オリヴィエ・マルシャル
出演:
ダニエル・オートゥイユ
(レオ・ヴリンクス)
ジェラール・ドパルデュー
(ドニ・クラン)
ヴァレリア・ゴリノ
(カミーユ・ヴリンクス)
アンドレ・デュソリエ
(ロベール・マンシーニ)
ダニエル・デュヴァル(エディ・ヴァランス)
ミレーヌ・ドモンジョ(マヌー・ベルリネール)
フランシス・ルノー
(ティティ・ブラッスール)
カトリーヌ・マルシャル
(エヴ)
アンヌ・コンシニ
(エレーヌ・クラン)
ロシュディ・ゼム
(ユゴー・シリアン)  
REVIEW(*****)
久々にいいフイルムノワールが帰ってきたという感じ。昼間の回だと
自由席の映画館で100席未満なので入れないといけないので
朝一番で見に行ったらあわや座れなかったという(汗)。
メルヴィルが難しいけれど、米国のような犯罪映画では物足りないという
人への『フィルムノワール入門』にはふさわしい、米国のよさと仏国の映画の
よさをいかした映画だったのではないでしょうか。
父親はノワールもの専門の小説家で、自身は警察官出身の監督で
ドロンの刑事モノにもチョい役で出演したことのある監督が、'80年代半ば
共同脚本に参加した元BRI刑事ドミニク・ロワゾーからインスパイアされたという。
映画の中に出てくる。強盗鎮圧作戦も実在する事件を元に作られた話であり
ドニもモデルはBRBの手柄だけを立てたかったという、ロワゾーと
対立するボスだったという。劇中でエディが死ぬシーンは当時この事件で死んだ
ジャン・ヴィンツをモデルにしているものと思われる。
実際の話では、BRIは強盗鎮圧のあと(エディが殺された後)に内部の
一部の人間による汚職が発覚、殉職した警官は、映画のような公葬に
ならなかったばかりか、新聞に経歴を載せられ、『二度殺される』ような
屈辱を味わったという。そこまで描く代わりに、映画では、エディの公葬に全員が
降格覚悟の上で背をむける忠義心が描かれたのだろう。
 言葉だけで描くと、ドニはどこまでもふてぶてしく見るのも嫌な人物であり、劇中でも
上司に『おまえのようなヤツは裏社会で駐車場で頭を撃たれて死ぬ』と言われ
事実、主人公が手を下すまでもなく、遠き報いをうけその通りになるのだが
そういう役柄を演じていても、普通に見えるのはドパルデューならでは。
そんな彼の部下を演じ、最後に見切りを付ける『清い女性』を演じるのは
監督の奥さんというのも興味深いし、ドニに罪をかぶせられ投獄され、出所してきた
レオを受け入れる娼婦にミレーヌ・ドモンジョを起用する監督もまた粋。
かつて、20代の頃は美人でおきゃんだった彼女が60代になり、
密かに思いをよせる男が命がけで復讐をしようとするのを見抜き
銃がいるといえば『いつまで?』とだけ聞く。野暮じゃない。
そんな『彼女』のだらしないダンナ役をカメオで演じてたのは監督自身
なのだからホレこみようもスゴかったのだろうなぁと。
また、レオが出所してきた時に出会う娘ローラの役はレオ役のダニエルの実の娘の
オロール。エンディングは彼女と一緒に『旅立つ』のですから、いいですね。


イルマーレ(2006)
研修を終えてシカゴの病院に移ることになったケイトは慣れ親しんだ
湖の家を後にする前に、見知らぬ次の住人あてに手紙を書きポストに入れた。
しばらくし、母親と再会した彼女は医者でありながら目の前で交通事故に遭い
自分の腕の中で息を引き取った青年に心を痛め、慣れようと努力した
現場から離れるべきだと、同僚のアナから勧められ、気がつくと、あの日の
湖の家に戻ってきていた。ふとポストを見るとポストに手紙、やはり誰も
きていないのだろうか…そうではなかった。
威厳ある建築家である父親に反抗し、新鋭建築家を志しながらも実際は
建売住宅の現場代理人しかさせてもらえず、なれそめのGF、モナに
仕事現場までつきまとわれる日々のアレックスは、かつて父親がいまは亡き母の
為に建て今は誰も住んでいない湖の家に帰ってきて不思議な手紙をポストに見つけた。
『入り口の犬の足跡は前からありました。屋根の裏の箱もです』
アレックスが来たときに犬の足跡はなかった、が、新居を片付けたとき家の外で
ペンキ塗りをしていると、どこともなく犬がやってきて玄関に足跡をつけていった。
ケイトとアレックスの間には『二年』の隔たりがある…しかも彼女が二年後に住んでいる
マンションは二年前は建築中だ、しかし、このポストだけで二人はつながっている
'04年の4月3日、季節はずれの大雪が降ったから気をつけてと、マフラーを投函する
ケイトの言ったとおり大雪が降った。これは偶然じゃない。
ケイトが投函した手紙はやがて二人の『交わることのなかった人生』を交錯させて
いくことになる。
『どうしても逢いたい』『場所を決めてきっと行くよ、明日でどうだ』
『私の明日は貴方の二年後よ』『構わない、待つよ』
そして、アレックスは、街で人気のレストラン『イルマーレ』に二年後の明日予約を
入れるのだが…
(原題名:The Lake House)
監督:
アレハンドロ・アグレスティ
脚本:
デヴィット・オーハーン
原案:
『イルマーレ』(サイダス制作)
出演:
キアヌ・リーヴス
(アレックス・ワイラー)
サンドラ・ブロック
(ケイト・フォスター)
クリストファー・プラマー
(サイモン・ワイラー)
ディラン・ウォルシュ
(モーガン)
ショーレー・アグダシュルー
(アナ)
エボン・モス・バクラック
(ヘンリー・ワイラー)
ウィリケ・ファン・アメローイ
(ケイトの母)
リン・コリンズ
(モナ)
 
REVIEW(*****)

いやはや、原作版にあまりいい印象を持っていなかったのでリメイクに
そんなに期待してなかったのですが、意外といがったです。
原作のファンに失礼承知でモノ申すのですが、原作ですっきりしなかった部分や
ロケーションや設定として好きになれない部分を、スッキリさせていたので
このあたりもマルでした、何より、サンドラとキアぬんの共演は待ちに待たれて
12年ぶり、嬉しかったです。ベタベタしてない所がいいっす。
男性の方が先に女性の存在に気がついていて、どうしてもニアミスを繰り返して
それでもあきらめないのは日本でも『君の名は』の数寄屋橋じゃないけど
繰り返されてるワケであり。
アレックスもケイトも一応食うに困らないキャリアもあれば、なんとなくの恋人も
いるけれど、心が満足しているワケじゃない、そこに運命のいたずらで届いた手紙。
最初に『存在』に気がついたのはアレックス。で、何とか自分の住んでいる
二年前の世界でケイトに自分自身を『記憶の彼方』にすりこませようとして運命を
変えようとする。それが実るのは、ホントの土壇場の土壇場、映画のラスト数分前。
原作と同じように待ち合わせをしたけれど、約束の場所にこれなかった本当の理由が
『自分の存在』だったと知ったのは、'06年の出逢いから二年後だったケイト。
この時の『アレックスを救ったからくり』だけが、ナゼかどうしてもわからない(汗)
あの『手紙』って'04年と'06年の『二年間』だけ行き来していたハズなのに、
あの一瞬だけ'08年から'06年に『行き来』してまた『都合よくアレックスが受け取った』
んだろうか…、そう考えないと、ネタバレになるけれど最初のアレから救われないワケで。
でも、あの時に逢ったならケイトはホントに全く知らないままだったろうし、
ラストのまさかまさかのドンデン返しは『こんなコトあっていいのかよ』でも、
久々に、『恋が哀しく切ないことを思い出させる映画』でもあったと思いました。



オールザキングスメン(2007)
時の大統領に『最も危険』といわれた政治家と
貴族出身のナイーブなジャーナリスト。異なるバックグラウンドを
持つ二人、相容れることない価値観が交錯したとき
あらゆる人間が巻き込まれ悲劇は起きる…

ルイジアナ州メイソンで上流階級出身のジャーナリスト
ジャックが当時出納係だったウィリーとであったのは
終戦から10年も経ってなかったころだった。
実直で不正の許せないウィリーは、小学校建築不正入札を
毎日街頭で演説、そんな彼はジャックにとって最初は
『記事になりやすい存在』だった。
やがて目立つウィニーを『次回の知事選の当て馬にしよう』
と役人のダフィーが現れる。そんなことも気付かずに
立候補してしまうウィニーにジャックは本当のことを告げると
ウィニーの演説はめきめきと人をひきつけ、とうとう
どんでん返しで知事になった。
しかし、そこに待っていたのは、あれほど、ウィニー自信が
嫌っていたはずの汚職、愛人などのスキャンダル。
ついにはジャックの親代わりであるアーウィン知事がウィニーに
牙をむくことになる。
いまや、ウィニーの記事を書き続け保守派の新聞社を辞職し
彼の右腕になったジャックは知事のスキャンダルまで
探さねばならなくなる。
ジャックの胸には彼の初恋であり知事の娘のアン、そして
繊細であるが故に世間に背をむける医師のアンの兄アダムがいる。
ジャックは、その後さらにウィニーに関わったことで
自らの人生を苦しめることになろうとは思いもよらなかった
(原題名:All The King's Men)
監督:脚本
スティーヴン・ゼイリアン
原作:

ロバート・ペン・ウォーレン
出演:
ショーン・ペン
(ウィリー・スターク)
ジュード・ロウ
(ジャック・バーデン)
ケイト・ウィンスレット
(アン・スタントン)
マーク・ラファロ
(アダム・スタントン)
パトリシア・クラークソン
(セイディ・パーク)
ジェームス・ガンドルフィーニ
(タイニー・ダフィー)
アンソニー・ホプキンス
(アーヴィン知事)
ジャッキー・アールヘイリー
(シュガーボーイ)
 
REVIEW(*****)
『ハスラー』で名をはせたR.ロッセンが'49年に赤狩りの前に
完成させ、’50年代に赤狩りが始まると監督は赤狩りの犠牲者に
原作になった映画は'76年に岩波ホールで公開されたという
『オール〜』の前作。元々は当時のルーズベルト大統領をして
『マッカーサーの次に危険な人物』と挙げられたルイジアナ州知事、ロング。
彼の伝記映画も日本未公開ながらDVDで『キングフィッシュ』
として出ています。
今回は『モノいう俳優』S.ペンがコレを演じるというので
楽しみに見に行きました+映画館もお客さん少なかったのでいい雰囲気で
見ることができたのでこの点数です。
監督のゼイリアンはあえて前作はみず、原作の持つ雰囲気に
そって映画化したそうで、この映画の公開時にフランス大統領選がカブって
いたのもあり、このS.ペンが演じるガンガン押し切る演説派+
  『働けば働くほど供給がないのはおかしいぞ』という共産主義は
 サルコジ氏がカブって、『この空き地に小学校を作ろう』と宣言する
シーンではロワイヤル氏がカブってしまうという。
米国の映画なのに、仏国大統領選がカブるというのは皮肉なハナシですが。
ジャックの役は観客の視点で殆ど描かれているので、政治映画で主要キャラの
中に一人でもこういうのがいると楽ですね、ハイ。その傍観者でありながら同時に
共犯者にもなる。見ている観客をも複雑な心境にさせるという。
アダムやアンは滅んでいく貴族の生き残りというのが、電気を消し、ホコリよけまでした
豪邸に昼間だけいて、夜は狭い都会のアパートにいるという、見得を
捨てきれない生活ぶりで判る。
アンは争いごとに巻き込まれたくないと思いながら争いの渦中に、ジャックが
関わったことにより巻き込まれ、アダムは自分の思惑と反対の行動に出てしまう。
でずっぱりで、観客に影響を与える役目がS.ペンなら、僅かな出番で
場面をガラっと変えてしまうのがA.ホプキンス。
 2時間以上の映画のなか、三つのシーンしか出てない気がする(汗)
 のに、そこでハナシがかわっていくという。
それぞれの『運命』に翻弄されていう悲劇ではあるのだけど『絶望』を書いてるわけじゃない。
政治としての理想が生きていれば、誰かが何かで出てくるはずだからという映画
だったんじゃないだろうか。
この映画、ハリケーン『カトリーナ』の救済のために『デジャヴ』などと共に
ニューオリンズで撮影されたものだけれど、先にS.ペンがニューオリンズに
行ってしまったことが売名行為扱いされたそうで。
目立つと叩かれるってのは良くないなぁ・・・


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